■こわーいお話!靴底の経年劣化



■みなさんはこの写真を目にしたことはありますか?
この写真は、登山靴・トレッキングブーツを製造又は販売しているメーカさん『登山靴・トレッキングブーツ品質対策委員会』が製作したポスターやパンフに使われている写真です。お店でもご覧になられた方も多いと思いますが、これは人事ではありません。

皆様がお使いの登山靴・トレッキングブーツの多くは、ポリウレタンミッドソールという靴底にポリウレタン素材が使われています。そのポリウレタン素材の経年劣化が原因で、靴底が剥がれて破損するという事態が現実に起きています。

私達にとっても登山靴を愛用している以上、人事ではありません。山の店で働いていたときに、『底が剥がれたので何とかしてほしい』と、上の写真のような登山靴を年間数人のお客さんから持ち込まれていました。

 

北アルプスの有名な山小屋のご主人にお聞きしたことなのですが、山の最盛期には、1日最低1人は、靴底が剥がれてしまい駆け込んでこられるそうで、そのたびに針金とガムテープを使って応急処置をされているそうです。
針金やテープ、紐などで応急処置をしたからといって、それが長時間もつわけではありません。山行途中であっても速やかに下山するしかありません。

数年前に、こんなことがありました。
夏山シーズン真っ盛りのある日。いつもの時間、朝9時前にお店に出勤したところ、タクシーが1台駐車場に止まっていました。

私が駐車場に車を止めてお店に向かおうとすると、『お店開きますか?』とタクシーの運転手さん。『すぐ開けますよ。』と答えると、『お客さんの靴が壊れたので、靴を売ってほしいんですが・・・。』と運転手さん。そのタクシーに乗ってこられたお客さんも、『すみません。』と言いながら、両足とも底の剥がれた登山靴を手に持って見せてくれました。

大急ぎで開店準備をしてお店の中に入ったいただくと、早速、登山靴選び。お好みの靴が見つかりサイズを合わせて購入していただきました。そのお客さんは、遠方から仲間の方と、昨夜から電車で常念岳に登りに来られて、朝5時に穂高駅に到着してから、そのタクシーで登山口まで。

歩き始めて15分くらいしたところで靴底が突然両足同時に"パカッ"と剥がれてしまい、すぐに乗ってきたタクシーを仲間の方がなんとか呼び止めて、お店まで乗って来られたそうです。

仲間の方はそのままゆっくり登り始めているのでこれから追いかける。と今までのいきさつを話していただいた。『すみませんが処分してください。』と預かった登山靴は、きれいに両足とも 靴底がウレタンの部分から剥がれていて、そのウレタン部分を爪でひっかいてみると、なんの抵抗もなく、ボロッと崩れるように粉々になり、なんだか不気味な状態でした。

■ポリウレタンの劣化と寿命
今、夏山用として販売されている軽量タイプの登山靴・トレッキングブーツのほとんどにポリウレタン素材が使われています。ポリウレタンは、軽量で耐磨耗性に優れ、適度な衝撃緩衝性を持っているという優れた性質から登山靴・トレッキングブーツのミッドソール(靴底)に採用されています。しかし、そのポリウレタン素材は一定の時間が経過すると経年劣化により寿命がきてしまうのです。
では、どのように劣化が進行するのか?
ポリウレタンの劣化原因の多くは、次の4種類が考えられます。

  • 加水分解 水分や湿気が原因で劣化を進める
  • 微生物劣化 カビやバクテリヤが原因で劣化を進める
  • 熱(酸化)劣化温度の上昇(高温)が原因で劣化を進める
  • 光(酸化)劣化紫外線が原因で劣化を進める

これら劣化を進める原因には、保存環境が大きく影響します。 特に保管環境の適さない場所に長期間放置された場合は短期間で寿命を迎えることになります。 通常のポリウレタンの寿命は、4年〜7年と言われています。ポリウレタンは、製造日から劣化が始まっているため 登山靴の場合は、製造から新品で手元に届くまでの日数もすでに消費していることになります。それを考えると 登山靴の場合は、5年程度が寿命ということになります。

湿度、温度、紫外線、カビなど保管環境が悪いかまた長期間放置された場合は、3年程度で、寿命ということもあります。

登山靴に使われているポリウレタンは履けば履くほど強くなると言われています。登山靴を頻繁に履くことで、劣化の進行を遅くすることができるのです。ポリウレタンの寿命がくる前にソール交換が必要になるくらいが理想です。大切にしまいこむよりも積極的に履く方が寿命を延ばすことにつながります。

突然、登山靴の底が剥がれたという方にいつも 『何年くらい放置しましたか?』と質問させていただくと、多くの方は『3-5年しまっていました』というお返事が返ってきます。

日本の気候は湿度が高く、長時間放置されると湿度とカビを避けることはできません。

劣化を最小限におさえる方法としては、登山靴(他のシューズなども)を長期間放置しないことが第一です。

山に登らなくても最低月にいちど、登山靴を履いてお散歩をするか、歩かなくてもブラッシングなどお手入れをすることでもだいぶ変わります。

保管時は、風通しが良く、湿気が少なく、日光が当らない、高温にならない場所で保管して、放置しないようにしてください。 特に、ビニール袋や箱に入れて密閉、屋外、車の中、地下室、高温になる場所(ストーブの周り)、カビの発生する場所での保管は劣化を早めますのでご注意ください。

あなたの登山靴も毎日劣化が進行しています。
・登山靴は、山に出かける前に必ず点検してください。点検するポイントは、ソールに亀裂が無いか? 剥がれかかっている所が無いか?ソールは減っていないか?D環やフックに異常は無いか?靴紐は切れかかっていないか?

・使った後は、汚れを落とし、必要に応じて保革・防水など補給してください。

■もし、異常を発見したら、使用をやめて登山専門店にメンテナンスを依頼してください。




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